耐へ難きを耐へ、忍び難きを忍んで


昨日の夕方、とっとと風呂に入ろうと思ったけれど、6時から戦後70年の首相談話が発表されるというので、TVの前に座った。

談話があまりに長くて、フジテレビでは途中にCMが入っちゃったのには笑った。
すぐにチャンネルを変えたら、さすが天下のNHK、CMは入ってなかった(当たり前か)。

談話が長すぎて、入れていた風呂の水が溢れてしまったけど、それでも、概ねよくできた談話だと感心した。

中味がどうこうというのではなく、文章の作り方が秀逸だ。
指定された!? キーワード「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」をきちんと使いながら、できるだけ核心には触れないように、どうにでもとれるように話を進める。
さすが、受験戦争を勝ち抜いてきた東大出のワザだ(原稿を誰が書いたか知らないけれど、きっと東大出の官僚に違いない)。
受験勉強をせずエスカレーターで大学まで上がった安倍総理では、こうはいかない。
もちろん、その場のイキオイで「法的安定性は関係ない」とか「戦争に行きたくないは利己的個人主義」なんて口走ってしまう輩は、なにをか言わんや(官僚出身の人もいるようですが、頭悪すぎて官僚としては使い物にならないから政治家でもやらせとけ、って感じでしょう)。
この国は、お勉強のできる官僚と、おバカな政治家で動いているんですね。


いきなり日露戦争を持ち出してきたのには驚いた。テロップが出なければ聞き逃すところだった。
「政 治は、歴史から未来への知恵を学ばなくてはならない」から、100年以上前の戦争まで遡って、日露戦争が「アジアやアフリカの人々を勇気づけた」とし(も ちろん一部にそういうこともあったことは聞いたことがありますが)、(日本のやってきた)戦争はいつも「悪」だとは限らない、と高らかに宣言した。
この勉強熱心さで、日清戦争はもとより、元寇まで遡って、未来への知恵を学んで欲しい。


安保法制の成立のために、脅威を喧伝するしかなくなった中国に対してはそれなりの配慮をし、アメリカを通して同じ側に立つはずの韓国に対してはそっけないところも、なかなかずる賢く立ち回れていてステキだ。



今朝の新聞を読んでいると、野党辺りから「自らの言葉ではない」とか「主語がない」なんて、ピント外れの批判が多い。
当たり前でしょ。
安倍総理が、自らの考えを自らの言葉で語ってしまっては、すべてがぶち壊しになることは目に見えている。


周りの官僚だけでなく、自民党公明党のお友達からも
「なにを置いても今国会で『安保法案』を成立させるのが第一義。ここはひとつ、なにとぞ穏便に」と説得されたのだろう。

よく、我慢したと思う。
エライぞ、晋ちゃん。
ヨレヨレしんちゃん。


過去の発言との整合性を質問されても、まともには答えなかった。
村山談話を村山さんの個人的な歴史観、と断じていたのに、もとより整合性なんてとれるわけはないんだから、徹底的にはぐらかすしかない。
ま、これは、国会答弁でも、安倍さんの常套手段ではあるけど…。


とにかく、高い支持率に支えられて(あぐらを掻いて!?)意気揚々と談話発表への意欲を語った頃、「同じ言葉を入れるのなら談話を出す必要がない」と言い切り、自らの歴史観を示そうとしていた頃の高揚感は微塵もなかった。
そこにあったのは「耐へ難きを耐へ、忍び難きを忍んで」の悲壮な姿勢だった。


そう言えば、今朝の朝刊の「朝日川柳」。
「耐え難きを耐えて談話を出す総理」

まったく同じ印象を持った人がいるもんだ。
こりゃ、時節柄、私もパクリと言われるな。


そんなことはさておき、安倍総理、本当にお疲れ様でした。
心中、お察しいたします。


「あの戦争には何ら関わりのない私たちの子や孫、その先の世代の子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」
その通りです。
ただ、謝罪を続けなければならないかどうかは、謝罪する側が一方的に決められることではない。
私たちが本当に許してもらうために、今私たちができること、しなくちゃならないこと…。
安倍内閣にはできる限り早く退陣していただき、今後二度とこのような政権ができないように監視する。
それしかないのではないか。



安倍さんには、ぜひこの捨てゼリフを残して去っていただきたい。

「みっともない談話ですよ、はっきり言って。これは私が作ったんじゃないんですからね」。


p.s.
本日「終戦記念日」の全国戦没者追悼式で天皇陛下の「お言葉」。
昨年までは、「お言葉」は毎年ほぼ定型化されており、違った表現を入れられるのは異例とのこと。
そうまでして、昨日の安倍談話よりさらに踏み込んだ表現で
「さきの大戦に対する深い反省と共に」
「平和の存続を切望する国民の意識に支えられ」
と、おっしゃった。

つまり、「さきの大戦を深く反省せず」「平和の存続を切望する国民の意識」に反して何事かをなそうとしている人もいるけれど、日本国民の大多数はそうではないですよ、と。

これはもう、悲壮な決意を持って心にもない談話を発表した安倍総理にとっては、まさに「泣きっ面にハチ」「弱り目に祟り目」。

まるで「昨日ウチのバカ息子が長々と中味のないことを申しましたが、後で私のほうからよーく言って聞かせておきますから」と親に言ってもらっているように聞こえたのは私だけ?