こだわり

ようやくパンフレットを発送することができた。
みなさんのお手元にも届いていることと思う。

毎年のことながら、教室の生徒さんじゃない人からは圧倒的に評判がいい。
「なかにしスキー塾つうしん」もそうだ。
教室には参加したことのない人、参加する可能性がない!? 人から、
毎回「楽しみにしています」とメールをいただく。


元来、天の邪鬼なせいか、それはそれでいいと思っている。
っていうか、それを「誇り」、いやいやそんな立派なもんじゃない。
「自慢」にしているフシがある。
だから、商売としては一向に儲からないのだけれど…。


デザイナーの牧野さんは表1の写真を送ったとき、滑る私を大きくトリミングして使ってくれた。
が、私はバックをどうしても入れたくて、作り直してもらった。
ロケーションは4月の立山、剱沢である。
前々日の夜に季節外れの新雪が降った(菅平でも積もるほど)。
昨年のパンフレットに使った写真は朝イチだったのでまさにパウダーだったが、
剱沢まで歩くうちに気温が上がり、とても難しいクラストになった。
それでもとても気持ちよく滑れた一本だった。


後ろは剱岳だ。
写真ではあまり伝わらないかもしれないが、このコマのあたりで斜度が変わって
40度を優に超える急斜面に飛び込んだところ。
バランスを崩したわけではなく、普通に滑っていて山側の手が斜面に付くぐらいだから。


一方、表4の転倒写真は6月の立山
コピーに合う転倒写真を剱沢の写真の上に載っけてもらった。
撮影1本目の滑りだが、滑り出してみるとハンパない硬さで、山用の兼用靴にたいしてエッジを研いでいないセミファットのスキーでは太刀打ちできなかった。
その時の「ずれずれ草」(http://d.hatena.ne.jp/jukuchou/20100607)にも記したが、
「もういいかな?」。
「もう転んじゃおっ、と」。
と、けっこう情けない!? 転倒になってしまった。
本当はもっと派手な転倒シーンが欲しかったのだけれど…。



校正のPDFを見た妻は
「表紙、去年と一緒?」と聞いてきた。
確かに表1のメインキャッチは同じだ。
滑りや山に関心のない妻にとって、写真が変わっていても同じ字体の同じコピーの表紙は変わりばえしなかったのだろう。


が、言っとくけど、これはけっして手抜きではない。
時間がなかったからとか、他のキャッチが思いつかなかったからとかではなく、


「雪狂ひ」
「粉患ひ」


に、強いこだわりがある。


スキー場を飛び出して、雪のある斜面ならどこでも滑れる技術を伝えたい。
そのためのスキー教室でありたいと願っているし、パンフレットはそのテイストを強く打ち出したい。


多くの生徒さんのニーズと、必ずしも一致していないかもしれない。
パウダーやオフピステ自在に滑りたいとは思っても、「そこまでは私にはムリ」と思う人が多いのだろう。
でもね、ゲレンデから一歩踏み出す踏ん切りが付かないのを、運動能力や体力や時間やスキーを始めた年齢や、
ましてやトシのせいには、私はしたくない。


「こけたら立ちなはれ」


松下幸之助氏のこの言葉は、昨年のパンフレットを作る少し前に見つけて温めて!? おいた。
シンプルで当たり前のことだけど、深い。
失敗することを怖れてトライしないなんてもってのほか。
こけたら立ち上がってまた滑り出せばいい。
まさに、スキーヤーのために言ってくれたような一言だ。


今年の春に私自身が実際にコケて、アキレス腱を断裂した。
秋にはNHKで松下幸之助の(正確には妻のむめのの」ドラマ「神様の女房」が放送された。
両方とも想定外であったが…。


松下幸之助氏はさらに言う。

「成功とは成功するまで続けることである」



この言葉を支えに、今年もまた

魚のいないところに釣り糸を垂れる。
風の吹かないところに帆をかける。